9/3 前夜祭 20:00
齢24。24年目の記念日。世界一素敵な日。
そう、明日は誕生日である。
仕事を終え4~5軒はしごして泥酔したい夜も、今は緊急事態宣言。世間が許してくれない。
焚火をしながら夜明けを待つ。今日の深夜からずっと雨らしい、天気が許してくれない。
「仕方ないからケンタッキーでも買うか、、、」
「ごめんなさい、テイクアウトも20時までなんです、、、」
あぁ、諸行無常。誕生日の前夜祭にそんなことあるかと世間を呪った。ケンタの気分になっていた喉と腹がズシンと重みを増した。
人が行き交う街に対してマジで行き場がない。結局シャッターで溢れ、最低限光る街を横目にとぼとぼと家に帰った。
①.酒とつまみを食べて明日を迎える。(安牌策)
②.雨の中でも近場を散歩する。(安牌かつ少しアクティブ)
③.雨だけどバイクで遠くに行く。(アクティブかつ無理難題)
そんなことを考えながら横になっていたら寝ていた。
9/4 AM0:00
ハッピーバースデー俺。起きたら24になっていた。さぁどうする。
とりあえずシャワーを浴びてひと段落。結局選んだ答えは、、、
読者の期待を裏切らない③でした。この後険しいことが起こるとも知らずに。
ひっそりとした街に道路を走る車がシャーっと音を立て、想像の5倍もの雨が降っていた。すぐに靴が死んだ。
雨合羽を着てライディング。ヘルメットと体に容赦なく雨が突き刺さり、苦笑いをせざる得ない。最近は無茶とノリで行けるときのラインが分かりつつあるが、これは明らかに無茶だった。というか無謀。
しかし、この無謀に垣間見える先の見通せなさに楽しさを感じてしまうものだからタチが悪いと思う。
「これしんどいなぁ、帰ろうかなぁ、でも帰ってもすることないしなぁ」
優柔不断を反復横跳びしながらも徐々に街は離れていく。そして赤信号で停止しているときにそれは起きた。
「コイツ止まるよな、、、、えっ、、近くね!?」
ドンっっっ!!!!!
理解する時間よりも圧倒的に早く、乗っていたバイクが前に押し出され、バランスを失う。
反射的に自身を逃すためにバイクを倒し、ようやく理解する。
――――後ろから激突された。
交差点の光が雨で濡れたアスファルトを際立たせ、被害者と加害者という関係性を一瞬にして作り上げる。
相手が警察を呼び、警察が来るまで待機。
土砂降りのなか、見えない先のことに不安を感じながらお互いずぶ濡れで立ち尽くしていた。
免許証や車検証を求められ、いつも通りであろう現場検証をテキパキと警察が進めていく。
「じゃあこれで現場検証は終わったのであとは本人同士で話し合ってください」
結局警察が来てから撤収までは30分程度だった気がする。自分が感じた事故の衝撃よりも拍子抜けするほどあっさりとしていた。
10-0で明らかに相手の過失だった。「事故というのは誰も得しないな」と誰もいなくなった事故現場を見て思った。
AM 3:00
保険会社に連絡して、部屋で酒やらつまみを食べた。
―――明けない夜はない。5時過ぎには空が明るくなっており夜の短さを感じて寝た。
AM 11:00
起床。いつも通りの朝を迎え、家事を済ませ外へ。
「そういや、俺事故ったんだよなぁww」
チャームポイントである切り替えの早さを発揮してバイクに跨る。
本当は真っ先に修理や点検に出した方がいいのだろう。しかし俺は止められない。
気付くとバイクを走らせ、公園に着いていた。
ぶっちゃけこういう景色は何度も見たことがあったので、特に印象がなかった。どこにでもあるような普通の景色。
PM 14:00 わたり温泉
ここは入浴料金が一般料金で700円、会員と呼ばれる地元民は500円だった。
「ちょっと待て、にーちゃんこれ使えや700円たけぇから」
松屋にあるようなタッチパネルを操作しているときに、後ろにいた金髪のおじさんに話しかけられる。会員証をこっそりかざしてくれるという謎の好意で、会員価格で入ることが出来た。
温泉はTop3に入るんじゃないかというくらい良かった。ガチ温泉ということが浸かっていてはっきりと分かり、露天風呂からすぐ近くの海が見えた。入ったのは明るいうちだったが、夜に浮かぶ星を眺めながら海の音を聞いてみたかった。
帰り際のぱらつく雨のなかに虹が出ていた。
PM 16:00 宿
「文豪になった気分だなぁ!?」
今回宿に泊まる理由はのんびりするという名目もあったのだが、実は明日に資格の試験を控えていたためその勉強という目的もあった。
「ま、とりあ休むべ」一瞬にして実家と化す。
ここでたまたま見たクレヨンしんちゃんの回が「オラの心はエリートだぞ」という個人的に好きな回であり見入ってしまった。この話はざっくり言うと......やっぱ自分でググるなり見てください。
PM 17:00 あら浜
ここはランキングでも上位であり実際に美味しかった。海鮮といったら酒が飲みたくなるものだがやはり世間が許してくれなかった。
そのあとはコンビニで酒を買い込む。季節を先取りして、あったかい缶コーヒーも売られていた。
季節や温度、湿度や風景、風や空気の匂いでふとそのときに似たような思い出が呼び覚まされることが多々ある。あとそれに結びつく音楽とか。
このときは空気の感じからジャパハリネットの哀愁交差点が結びついた。
「人間模様 哀愁交差点 この真ん中で俺はやれるか 俺は俺であり続けるか そして夢を叶えるか」
そしてこの曲からは就活の頃が思い出される。単位だの酒だの中身のない会話がある日を境に内定やESにすり替わることに違和感と、そう思わないといけない世間の風潮に嫌悪感を抱いていた。そういうものに負けじと今も抗っている。
PM 18:00 宿
酒を買い込むもその前に試験勉強。酒を飲みながらも至って真面目に取り組み、3年分の過去問を解いた。
24になって思うことをここにつらつら書くのはまた長くなるので割愛。一言で言うと性格的に仕事でも居場所でも1ヶ所に留まる気はないのだが、それにアタックできるまでの年齢や体力,数字面などをぼんやりと考えていた。鬼殺しに溶けたが。
月1でこういった適当な宿に泊まるのも悪くないなと思う。流行りのワ―ケーションみたいな。そして寝た。
9/5 後夜祭 8:00
起床。いい目覚め。適当に身支度を済ませ宿を後にした。
9:00 海辺
たびたびブログやYoutubeに出てくるいつもの海辺へ。訳もなく火を起こした。
スーッと明らかに夏に吹く風とは違う、少し寒いような涼しいような風が身体を流れていく。辺りには誰もおらず完全に一人。空がきれいに澄み渡っていた。
「試験前に火起こしてる奴なんて俺くらいだろ...」
パチパチと燃え上がる木を見てぼんやりと思う。なんだかんだ後に予定があると(あと何分後か...)みたいに時間を気にしてしまうので、あまりゆっくりすることが出来ず火は消えてしまった。パッと来てパッと火を起こして終わってしまった。
12:00 試験会場
試験は13時から。特に緊張することもなく至って普通に解いた。
2度と覚えないであろう知識が1問1問解いていくごとに頭から消えていく、まさに短期集中勉強。
テキスト代に4000円弱出すのが嫌だったので過去問しか買わず何を言ってるのか分からない所からのスタート。これを書いているころは、自己採は終わっているのだが先に言うと合格ラインは越えていた。
15:00 バイク屋
事故ったバイクを修理に出し、代車を貰った。2~3週間はかかるらしい。
違うバイクに乗るとまた違ったアクセルの感じやエンジン音になるので楽しかった。浮気をしているみたいで。
17:00 家
昨日買えなかったケンタッキーを片手に家に帰る。適当につまんでいると外で花火が打ちあがっていた。
東北はもう寒いのでふと「なんで花火って夏なんだろうな」とプレモルを流し込みながら花火を眺めた。