「線状降水帯」
そんな言葉があるらしい。まぁ簡単に言うと大雨。
お盆は総括して雨。関東は台風が来るし、秋田はずっと雨模様だった。この日も夕方頃から10mm前後の雨が降る予報となっており、バイクで帰ることに気合を入れていた。
「午後から雨すごいし、午前中で上がっていいよ」
バイクで帰ることに気を遣ってもらい、午後には帰ることが出来た。
「長旅になりそうだなぁ…」
秋田から神奈川まで帰る。その距離約700km。もっと言うとカーナビに表記された時間は高速で8時間。
「そんな長時間、長距離走ってて走行中何してるの?」
実家に帰った時に聞かれる。確かに何してるんだろうな。
ほんと気付いたら時間が経っていて、距離が削れているみたいな。ノンストップで3〜4時間走ってることもある。ヘルメットにインカムを付けて音楽が聴けるようになったのは大きな要因だと思う。
14:00 前沢SA
一つ目の休憩。2時間ノンストップで第一ボーダーの仙台まで2/3は来た。上手い具合に雲を抜けて雨の心配はなさそうだった。
仙台に着いたのは16時過ぎだったと思う。仙台に戻ってきたのも1ヶ月ぶりぐらい。仕事の都合上戻ってくることが難しくなったということもあるが、同期も友達もいない仙台にわざわざ行くことにあまり価値を見出せなくなったのが一番の理由。
ーーー圧倒的爆睡。軽く仮眠するつもりが、がっつり寝てしまった。
時刻は20時。めげずに出発した。
22:00 安達太良SA
なんとなく郡山まで行けたらいいなと思っていたのだが、爆睡のお陰で元気。日が変わるぐらいまでもう少し走ってみることにした。
じんわりとしっとりとした夏の夜を駆け抜けて宇都宮まで走った。
安定の快活。というか深夜まで走って宿を取るのはコスパが悪い。
24時チェックインの6時チェックアウトだとすると結局6時間滞在に5〜6千円払うことになる。
一方快活は8時間ナイトパックで2千円ほど。バイカーの強い味方だ。
8/10 7:30
起床。冷静に考えると半日で500km走り、残り高速を乗れば2時間半ほどで着く。
俺昨日頑張り過ぎわろた。地図と照らし合わせてもかなり進んだことが分かる。
地図だと遠いが別にそんな離れてる訳じゃないと思う。
その後は一般道を走る。完璧に休日だと思っていたので高速を降りた時の金額を二度見してしまう。休日料金の適応がなかった。
夜とは打って変わって暑い。秋田とは違い、関東はジメっとしたような嫌な暑さだ。
お盆に入りたてで交通量が増えたからであろうか、早速交通事故による車線規制で足止めを食らう。
ジリジリとした太陽に車のエンジン音と排気ガス。環境にクソ悪そうな道路を走った。埼玉スタジアムの側を通った時は「そういやGWでも通ったなぁ」と懐かしい気持ちになった。
「近く通るから今から顔でも出そうかなーって」
祖父母の家から一番近いコンビニで電話。客観的に見てもクソ迷惑な孫である。俺は基本アポ無しで3分前に急に連絡を入れる男だ。ふっ軽なので近くを通ったり、気分で会ったりする。
「どーも」
祖父母に会うのもGWぶりだから期間としては3ヶ月ぶりだった。実家に帰るルート上に位置するのでバイクで帰るときは寄ることになる。
世間話と一人旅で行った所の写真を見せてあげたりした。安息のひととき。25歳男性諸君、家族大事にしてますか?
世話になったり恩を受けた相手は絶対大事にしたいし、今日の気持ちは今日伝えたいし会っておきたい。
14:00 荒川付近
2〜3時間ほど休んで出発(と言いつつもずっと喋ってたのであんまり休憩していない)。東京と埼玉の境である荒川を渡り東京に入った。
そして今日の夜は高校の奴らとの集まりがある。場所は都内。
あと3時間ほどで実家に着き、その後電車に1時間ほど揺られないといけない。ハードスケジュール過ぎわろた。
(わざわざ秋田から来て、コロナあるのに都内かよ…)
若干のブーイングは否めなかった。グループで予定を合わせるのはなかなか難しい。
実家に着き、シャワーを浴びて即座に家を出る。滞在時間15分。電車に乗り込んで爆睡。
まとめるとこの2日間は、
9日:AM仕事 PM宇都宮まで移動500km
10日:AM祖父母宅 PM実家まで移動200km,都内電車移動、会食
ハードスケジュールだがこれぐらいが生きてる気がしてちょうどいい。
18:30 池袋
池袋にはあんまり行ったことがない。ほぼほぼ都内で飲むときは新宿だったから。
以前来たのは5年前。一個歳上のお姉さんと生まれて初めてラブホに行った。
俺が全負けしたと思う人はこの人と2年前につるんでいた一個上の人の2人だけ。隣にいるだけでブルってしまうような、余裕を持つことが出来なかった。完璧に負けた。今でもたまーに思い出す。
俺らにらしからぬコース料理。
めちゃくちゃ美味かった。…が飲みメインで生きてきたためこのような店は少し物足りない。あとぶっちゃけ6月半ばにも会っていたため話す話題もそんななく新鮮味にかけていた。
2件目は居酒屋へ。
やっと酒。しかし酒をばかすか飲んで電車に揺られると吐いた記憶しかないのでセーブ。
大4の頃かなんかに新宿でめちゃくちゃ飲んだ後電車に乗り込んだものの、代々木上原駅でダウンし初めてホームで吐いた。吐いたと言ってもトイレまでは我慢したものの少し溢れた的な。
近くの公園でベンチに腰掛け、着ていたゲロのかかったTシャツを捨てたのを覚えている。漫喫に泊まり、出勤するリーマンで溢れる電車に乗ったときはゴミみたいな気分だった。
そして冗談ではなく仕事の都合で山に1ヶ月ほど篭っていたため、都会の眩しさにカルチャーショックを受ける。一ヶ月山付近で見る人の数は新宿の3分ほどである。地方格差が生まれるのも納得する。
電車に揺られ、家に着き寝た。
8/11 実家
起床。この日は何も予定をいれなかった。家族サービス。
半年ぶりぐらいに昼過ぎまで寝て、夕方から近所の風呂屋へ。
風が強く吹いていたので露天風呂が気持ちよかった。長期休暇で時間を持て余した大学生が数多くいた。
帰りは母校を通って帰った。
社会人2年目で転勤が多い生活なので、固定された場所というのは年々ありがたくなっている。我ながら少しは苦労してるんだなぁと実感した。
8/12 5:30
起床。今日から3日間はいつものダチとツーリング。
しかし、関東には台風が来ていた。
マジでピンポイント過ぎてあり得なかった。
しかも秋田も大雨であり神奈川も大雨予報でほんと自分の居場所がないんじゃないかとさえ思えた。
「うぃーす」合流。
2人で台風のことを考えながらルートを決め、とりあえず走り出し途中でコンビニへ。
ザァーザァー。絶望。
朝6:30からの絶望。バイクは逃げる場所がない。
(こりゃ、今日は死んだな........)
雨が通り過ぎて、走り出す。
どんよりした曇天のなかインカムを繋ぐ。
「あー、ヤバイヤバイ!!!」
雨が降ってきた。一瞬にしてずぶ濡れになるも歩みは止めない。
走り続ける。
10:00 富士浅間神社付近
「今日は無理だな」
悟る。暗黙の了解が出来ていた。
とりあえずお参り。
神にスパチャとおみくじを引いた。
雨の神社はしっとりとしていて空気がきれいだ。
12:00 湖
富士山の周りは富士五湖という湖が存在し、いいツーリングスポットになっている。と言いつつ天気が悪かったので早く宿に行きたかった。
(うわぁ、久々にしんどいやつ来た…)
台風の余波。雨&雨。タイヤが雨を踏み、シャーっと音を立てる。
服と靴が全部死んだ。濡れすぎると感覚がバグるので少し雨が弱くなると、
「全然降ってない」とあたかも濡れていないように思う。
富山旅もそうだったが、コイツと走るときは基本雨のような気がする。
バイクに乗ってから天気予報と気温を意識することが増えた。湖は正直微妙。
曇っていたのもあるけど秋田に存在する「十和田湖」と「田沢湖」が圧倒的にきれいなのだ。
15:00 宿
チェックイン。チェックイン可能時間ジャストに到着する。
申し訳なさそうに、びしゃびしゃの服と靴で宿内に入るとタオルを出してくれた。
これぞ人と人。普通に3時間ほど濡れていたので迷惑な客だったと思う。荷台の荷物もほとんど死んでいた。
部屋に入るなり二人で荷物を干す。思ったよりも乾かない。
蒸発しているのか部屋の窓が曇り、変な臭いがした。マジで過酷。
ボロボロの状態で寝落ちしていた。
コンビニに夕飯を買いに行く際も雨に降られ、25%ほど回復した服もまた全滅した。家と服のありがたみを知った。
8/13 5:30 起床
台風が今日の正午にちょうどぶつかるらしい。その前にスーパー銭湯に移動し、やり過ごさないといけない。
ここはMaxで夜の手前まで滞在できるらしい。
館内で漫画や昼飲みをして夕方まで時間を潰した。
18:00~
台風が過ぎた。空が少し明るくなりツーリング史上一番天気が良かった。
ーーー風が強い。
走り始めた瞬間、台風の余波がまだあることを実感する。
だが帰る場所が俺らにはない。
2人で決めた野宿ポイントに向けて走る。
現実は甘くない。すぐさま暴風にバイクが煽られ、雨も降ってきた。
シャーーーーっと道路を雨が打つ。それを風が捕まえ、道路上は水滴が絶え間なく弾んでいた。
(あぁ…なんでこんなことしてるんだ……?)
大人しく家にいればこんなことにはなってなかったのに。風雨が凌げる家の偉大さをここで知った。
結局展望台の駐車場の脇の芝生にテントを張ることにした。
「やばいやばい!!!飛ぶ飛ぶ!!!!」
必死にテントを持ち、ペグを打つ。過酷。
ペグを深めに打たないと風で抜けてテントが飛んでいってしまう。物が飛びそうになる度に、ダッシュで取りに行くような10分間を過ごし中へ。
ーーーーバサバサバサ
テントが風で揺られ、気が気でなかった。
明らかにヤバい。久々のガチ。
8/14 4:00 起床
朝が来た。生きている。
思わず笑ってしまう。俺は令和に生きているはずだ。
徐々に空が明るくなり展望台から下界を見下ろす。が、雲が多くてイマイチだった。
「行くかー」「うぃーす」
今日は雨は降らないらしい、そして晴れる予報が出ていた。
ここは馬の顔のような岩の場所。なんかこう〇〇みたいに見える場所ってあんまり響かないんだよな。
次に堂ヶ島、市場、灯台、砂浜などを順に巡った。ちょろっと降りて…ちょろっと見て帰る……そんな感じ。
旅行のウエイトをどこにかけるのか人それぞれ違うと思うが、俺は単に「日常とは違う景色」を推したい。ダチは「食べ物だったり観光スポット」をしっかり選んでしっかりとした感想を抱くのがすごいと思う。
いかに自身が適当に生きているのが分かる。
日が暮れ始め、海岸線がきれいに浮かび上がる。
バイクで2泊3日。そもそも誰かと2泊3日過ごすこと自体ハードルが高いのに、台風という脅威のもとで予定を決めて行動できるのはやはり長年の付き合いの賜物であろう。
インカムを通じてグダグダ話しながら、互いの帰路に着いた。
8/15 6:00 起床
満足&満足。
地元に帰りやりたいこと、会いたい奴らに会うこと、全てを回収することができた。
天気は快晴、高速に乗ってバイクを走らせる。
日立まで高速で行きその後は下道で行く。
首都高を走った時はやはり分岐点が多く、かなり焦る。大袈裟に言うと4,5車線の中で、一瞬でルートを理解し、ウィンカーを出して合流をかける。バイクだから最悪タイミングがミスっても避けれるのは助かる。加速もバイクの方が早いし。
グングンと進んでいく。誇張するわけでもなく、5時間半休憩なしで走っていた。景色を楽しんだり、音楽を聴いたり、youtubeを見て気付くと時間が経っている。
ぶっちゃけ神奈川から仙台まで高速で4時間なので全部高速ならもう着いている。
夕方頃には着いた。駅前でラーメンを食べ、街を歩き寝た。
8/17 7:00 起床
遊んでいる時の疲労はあまり感じない。
支度をして髪を切りに行った。
今思えば仙台に来てから同じ美容院に1年は通っている。どこで髪を切ろうと何気なく探して見つけた。
胡散臭くアパートの一室でワンオペでやっている美容院。全部自分で作ったんだろうなぁという内装。価格はシャンプー込みで2200円。正直経営的に大丈夫なのかというほど。丁寧な施術でもう少し払いたくなる。美容師の人が個人的に好きで東北にいる間はここでお願いしたいと思っている。
その後はヒトカラに行き、一人飲み。
RADの初期の頃の曲。ずっと大好きだよほんと?を歌った。
野郎共で集まって酔っ払いながら歌いたい。
まぁ思うだけで別に一人でいいんだけど。
8/17 6:00 起床
今日は仙台から秋田まで帰る。
一日かけてちんたら帰ろうと思い、一般道で帰ることにした。
山形を経由して、秋田の海沿いを走るルート。
関東を走ってから、東北を走って思うのが東北は走りやすい。
走りやすいってのは信号がなくて、だだっ広い道路が続いてるという表現が一番しっくり来る。
なんだかんだ転勤でそういう所に来てバイクに乗れたのは良かったなと思う。
悩んだり深く考えたりすることが最近はあまりなく、バイクで走っている時も休憩してる時も特段何かを思うことがなかった。
海を眺めて、スーパー銭湯に入って家に着き翌朝を迎えた。