2021 10/23-24 那須ツーリング旅

「ーーーー横浜と仙台の間ってどこなんだろうな」

雲のようにふわっとした会話。しかし雲の正体が水であり凝固すると氷として具現化するように、しかしそれよりもっと単純に、そんな状態変化に手間をかけずとも決まった。


「んー、那須とかじゃね?」

出勤中の電車のなかでぼんやりとLINEを送る。

「じゃあ、行くか」「うぃー」

旅が決まった。

 

今回のルートはこれ

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お互いの住まいの真ん中である那須に現地集合。片道200km、朝8時集合。

 

 

一日目 AM 3:00

「出るわー」

ひっそりとした街を駆け抜けてLINE。返信は来ない。

どうやら既に出ているようだった。

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一方自分は仕事が終わって0:00まで遊び、軽く仮眠を取った程度。半覚醒状態でバイクに向かった。


トラックとタクシーしかいない寒い街をバイクで走り高速ライドオン。100km飛ばす。

片道200kmのうち高速は約180kmほど。乗ってすぐの1kmばかりであろうか、あることを思う。

 


「あっ、これ無理なやつだ」

圧倒的な風と寒さが身体を一瞬にして冷やす。指先と足先の感覚がスーっと消え、歯がガチガチと音をたてる。震えで体の芯がグニャンと曲がり脊髄が原型を失う。この感覚があと179km続く現実。寒さで澄み渡った夜空に浮かぶ満月と凍てつく風と一寸先の闇に覆われた高速道路。

 


「昼集合にしよう」と数秒間の内に何千回と思う。早く着きたいならスピードを出す他ないが、スピードを出すと風はより一層寒くなる。

 

気温8℃。ネットで少しググると時速100kmのときに受ける風は風速30mらしい。これをさらにググるとこんな結果になった。

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体感温度-9.5」

ほんとかどうかは分からないが、とにかく縮まらない距離と寒い時間が永遠に続いた。

 

 

 

AM 4:30 国見SA

「いや、無理過ぎる」

午後ティーで必死に暖を取る。車が羨ましかった。

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ここまで来ると帰るのも中途半端。生きるために進むしかなかった。


トイレの水がお湯であることに嬉しさを感じ、必死に手を温め、もはや機能を失った棒のような足を引きずってバイクに乗った。

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「あぁ、もういっそ殺してくれ」

少し休んだ分、辛さが増した気がする。一瞬にして凍てつく寒さが襲いかかり地獄が始まる。残りの距離が縮まらないことに絶望を感じていた。

 


AM 5:40 安達太良SA

「ーーーーー朝日だ」

朝日にこんな感動したことはなかったような気がする。もはや生命線のようだった。

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サーモカメラで見たら心臓以外は真っ青になっていそうな身体で、のそのそとSAの中に入る。

 

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「あったけぇ…」

必死に暖を取る。食べることは偉大だ。

少しのエネルギーを得られた感覚があった。

 

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日の光は偉大だ。道路がよく見えることもあって気分が前向きになってきた。寒いことに変わりはないが。


朝日とバイクと誰もいない高速道路。さっきまで綺麗に輝いていた月は化石の様に色が薄くなり空に浮かんでいた。

 

 

AM 7:30 鹿の湯

着いた。大地を噛み締めるように立つ。生きている。ぼーっとしながらダチを待った。


しばらくするとブォーンと横に並んできて合流。コイツといると今いるところがなんでも地元に思えるもんだから不思議だ。

 

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鹿の湯は一言で言うと千と千尋だった。

木造の建物であり、キシキシと音を立てる床と硫黄の匂いがほのかに香った。


中には3m×3mの湯船が6つほど。面白いことに40℃から始まり41℃の湯船、42℃の湯船と1℃ずつ上がっていくのが特徴的だった。MAXの46℃の湯船には常連であろうおじいちゃん達が陣取っており、地元で愛されていることが伺えた。


冷えた体に42℃のお湯が溶けていく。身体が機能を有し始め、人としての形を取り戻していく。ダチは風呂で寝落ちしていて、初めて溺死する人間を見る手前だった。

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AM  9:00 殺生石温泉神社

「次どこ行くかー」

俺らはいつもノープラン。殺生石を眺め温泉神社を回っている間にグダグダと予定を決める。

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殺生石はありがちに昔悪さをしていた妖怪を閉じ込めただか、倒すためになんかしたやつが散り散りになったものの一つらしい。へぇーって感じだった。

 

神社は普通にお参りをした。未だに神社のお参りや賽銭の意味が分からないし、この場面は願いを込めるのかも知らない。

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AM 10:00 那須岳

すぐ近くの那須岳をバイクで登った。

着いたところからはロープウェイで山頂付近まで行けるらしい。大体往復で2000円前後するなどなかなかいい値段をするところが多い。

 

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「今後の風次第で運行中止」

アナウンスが流れながら乗ったロープウェイは確かにギリギリで運行しており、「マジ落ちるんじゃないか」と数回は思った。

 


山頂付近に着くと確かに運行中止も納得いく風。雪も降っていた。

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下界は晴れており山頂だけ過酷だった。

 

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「俺ら帰れんのかなぁ」

粉雪がぶつかるバイク達を見て思う。

気合で降りて、滝と吊り橋、展望台を周る。

 

 

AM 11:30 駒止の滝

木漏れ日が続く山道を抜け、駒止の滝へ。

駒止の滝は遠くに見えるかたちであり、近くに行ってわぁーって感じの滝ではなかった。

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滝どうこうよりもその周りの木々が綺麗だった。

 


AM 12:00 つつじ吊橋

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「景色やっっっば」

一瞬夏とも思えるような爽やかさ。緑色に混じった黄色と赤色が点々として浮かび上がり、空は青色で白い雲がのそのそと咲いていた。


写真を見て気づいたけど奥に見える青色は街なのだろうか。海だと勝手に思っていたけど地形的に海なんてないんだよな。


高所恐怖症ってわけではないが冷たい風がピューピューと吹き、景色が鮮明なおかげで少しばかり怖かった。

 

 

PM 12:45 展望台

ここは何故か恋人の聖地と名付けられており、当て付け感が否めかった。大体何でもかんでも「恋人」を付ければいいと思ってそう。そんなことを2人で喋りながらサラッと流し麓に向かった。

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PM 13:30 南ヶ丘牧場

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「やべぇ!!ニジマスに餌やれる!!!ロバもいるしレストランもあるやん!!!平和やなぁ〜」

世界の優しさで出来ているので牧場に来ると、決まってテンションが上がってしまう。

 

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最初にレストランに入り昼食。

昼間からジンギスカンを食べた。一人暮らしを始めて不味い料理が存在することを知ってからは、こういう滅多に食べれない物はめちゃくちゃ美味しく感じる。

 


「餌やりやらんの?」

「やっぱ、いいわ」

言ってる時が一番楽しいので、実際レストランを出てニジマスを目の前にしたときはガンスルーをかました。

 

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もっと言うと馬の餌やりもロバの餌やりもガンスルーした。

 

バイクに戻り一息着く。若干思ってたことをふと口にする。

「ーーーー宿行かん?」「それな」

お互い疲労が蓄積していたらしい。珍しく15時過ぎに宿に向かうことにした。

 

PM 15:30 宿

「いや、エッッッッッロ」

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彼女と来てたら愛してしまうような部屋だった。今回は温泉も食事も楽しみたかったので、ちょっといい宿にした。


早速酒を一本開けてグダグダしていたら、いつのまにか2人とも寝ていた。ガバッと起きたときはもう夕食まで1時間であり、温泉に行くことにした。

 


ここの宿は施設内に温泉が3箇所ある。まず1箇所目。ヒノキ風呂。

「ぁ"ぁ"あー」

 

本日2回目の温泉。疲労故の温泉。

身体が湯に染みて、溶けていく。

外はひんやりと寒いが湯はあたたかく、湯けむりが辺りを覆っていた。温泉と言えばイメージするようなロケーションだった。

 

夕食はバイキング。

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中華がメインだった。

麻婆豆腐が辛いというより、しっとりふんわりしていた。揚げ物はサクッと音を立てた。

一時間半くらいいたと思う。

 


飯の後にまた酒を呷り、2箇所目の温泉に入った。今回の温泉は本館にあったのでとにかく広かった。

 

「この世界とは、、、」

湯けむりとほのかに色付く紅葉?を眺めながら思う。震えながらバイクを走らせ、ダチと様々な場所を周り、美味しい食事とふかふかのベッドと温泉。これ以上の世界が存在するのか気になった。見つけるんだけど。

 

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温泉を出たあとは宿の敷地内を散策して、部屋で続きの酒を飲んだ。

珍しく先に寝てしまった。俺の方が東北っていう寒い土地から来たためだと信じたい。

 

 

2日目 AM7:00

起床。朝を迎えた。

「そういえばコイツと迎える朝がダチの中では一番多いな」

カーテンから日差しが差し込んでいた。

 

「同棲ってこんな感じなんだろうな」と思うくらい大4の頃は入り浸っていた。

缶ビールをぶら下げて帰ると、あったかい部屋が待っていて「飲むべ」速攻で晩酌。コイツが仕事に行き、一人いなくなった部屋は広く感じてそのなかでコーヒーを啜った。午後からはバイトに向かった。

適当に鍋をやったり散歩をしたり、ピザを頼んでダル着で乾杯したり、最寄りから家に向かうのが自然とワクワクしていたような気がする。

まぁ小中からの付き合いともなると、色々とまぁまぁな感じだ。

 

そして3箇所目の温泉で朝風呂。ここは森をコンセプトにしており、ひんやりとした空気にまだ本領発揮前の太陽が潜んでいた。


「しゃぁぁぁあああ」

都会の空気を5層くらいフィルターに通した空気を感じながら、風呂に入り朝食のバイキングを終えて宿を出た。

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AM 10:00 乙女の滝

駐車場にちょいとバイクを停め、かろうじて滝と呼ばれてそうな小さな滝を眺めた。

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AM 11:00 沼ッ原湿原

ここが今回のハイライト。

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森を歩き、開けたところに出る。

 

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「新世界や、、」

果てしない大地。文明を築く前のLV.2,LV.3のような気がした。

 

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しばらく歩く。どこもかしこも同じような景色が広がり遠くには山々が見えた。奥日光にある戦場ヶ原に似ていた。

 

 

PM 13:30 那須ガーデンアウトレット

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思ったより人々が行き来していた。

ここにきた目的というのは防寒装備を整えること。この時の装備は上が4枚下が2枚。

 

買うものは上1枚、バイクのグローブ下に付けられそうな薄手の手袋、靴下だった。というか整えないと帰りがホントに帰れないような気がした。


肉体的にキツかったランキングTop3ぐらいには入る過酷さだったと思う。自らが選んだキツさ。

 

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っても2人でぶらぶら歩いていると、「多分俺いけるわ!!!」と謎の自信が湧いてきた。結局買わなかった。

 

 

PM 14:40 もみじ谷大吊橋

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ここは日本一とされているらしいが、正直何が日本一なのかよく分からなかった。調べてみると橋の数ある構造のなかで日本一らしい。例えるなら「魚」っていうカテゴライズのなかで秋刀魚にフォーカスを当て、ある漁業で取れた秋刀魚のなかで一番サイズが大きい的な感じだと今になっては思う。

 

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湖的なところからの高さは26mらしく、なんか中途半端な高さで変に続いた謎の橋を渡った印象だった。

 

 

PM15:30  竜化の滝

最後の湯っ歩の里に向かう前に竜化の滝に寄る。滝多過ぎわろた。○○の滝と勝手に呼べば勝手に滝になるような気がする。

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ありふれた滝前の風景を横切って一番奥に進む。駐車場からは20〜30分ほどだった。

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竜化の滝の3段構えは確かに素晴らしかった。

 

 

ここで滝オタの過去滝コレクションを披露したいと思う。

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①流星の滝&銀河の滝/北海道

落差120mほどもある滝が、2つ並んでコラボる感じが良き丸だった。紅葉も見えた。


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オシンコシンの滝/北海道

これは名前が良き丸。っても枝分かれして流れいく様はなかなか。


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袋田の滝/茨城

スケールが段違い。というのも他の滝と比べてかなり近い距離で見ることが出来る。ラオシャンロンって感じだった。


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④三階の滝/宮城

緑で溢れるなかゆったりと落ちていく様はなかなか良き丸だった。

 

滝オタ言うて写真がこれしかなかった。

大体滝は落差か何段構えか、落ちる量、滴りや広がり具合だとかそういうジャンルに分けられると思う。

 

PM 16:00 湯っ歩の里

ここは全長60mの長さを持つ、日本一の足湯らしい。

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旅の最後に足湯に浸かりながら、写真を見返してあーだこーだ言い合った。

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深夜3時から過酷な思いをして始まった旅も終盤に差し掛かっていた。暗くなる前に帰ろう。

管理人のおばちゃんは地元(那須?)の歌を気分良く歌いながら窓を閉め始めた。

 

 

PM17:00

暗くなり始めた山道を抜けて、高速まで一緒に走る。メイン道路を左折してETCをくぐり黒い空に浮かぶ「東京」「福島」の文字を目の前にして2人路肩に止まった。


後ろに付いていたので急に止まり始めた時はびっくりしたし、まさか改めて別れを言われるとは思っていなかった。俺はヘラヘラしていたい。

手を降り片方は北へ、片方は南へ。180°真逆な別れ道をそれぞれ進んだ。正直ドラマチックだと思ってしまった。

 

 


帰り道

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

どれだけ感動の別れをしようが自然は現実だ。ミリ単位の繊細な風が衣服の僅かな隙間に入り込む。

身体は震え、歯はガチガチと音を立てすぐに限界が来た。寒い、寒過ぎる。しかも行きは夜明けで明るかったのだが、帰りは闇。ハイビームを付けながら80kmをキープして走った。100台近くにトータルで抜かされたと思う。

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「勢いを止めるとガチでやられる」

帰りは一回だけ休憩してノンストップで走り続けた。

 

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BGMはcryamyの兄弟。「バイバイマイブラザー いつまでも愛してるよ」

 

おしまい。

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