2021/05-29 蔵王ツーリング

7:30 起床

カーテンを思いっきり開ける。

「今日めちゃくちゃ天気いいな」

 

一通り洗濯掃除洗い物をしていると着信が鳴る。

「ごめん!!欠員出て代わりに今日出勤になっちゃった...あぁ、無常。空が青い。1日が空いてしまった。

 

しかし、ここで即座に切り替えられるのが俺の良いところ。1分後にはるるぶを読み漁っていた。

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「定まんねぇけど、とりあ出るかぁ」

るるぶ、釣り竿、ちょっとのキャンプ用品、宿泊セットを無造作にリュックに詰め込み即座に家を出る。

 

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東北の天気は移り変わりやすく、先ほどの青空とは打って変わって雲で覆われていた。

いざランシュを持って外に出ると雨が降り始めたり、昼間暑いのに夜の冷え込みがすさまじいなど東北の天気は日常生活においてマジでよめない。

 

 

(レイ...!今から行く.......!)

最近バイク(名称:レイ)を買った。

免許を取ったのは大学3年になる前の春休みのことであり、動機としては長期休みの暇つぶしによるものが大きく、乗っている人も周りに一人もいなかった。ノリで即座に申し込み一人で栃木にある合宿場に向かった。

 

今でも覚えているがここでのエピソードが濃く、色々とヤバかった。

 

①驚異のヤンキー率

教習生の7割方はヤンキー。そして指導する教員もまたヤンキーだった。

宿舎の注意書きには「奇声を発しないでください」が最初に書いてあるような治安と外に散乱しているタバコの吸い殻。トイレの壁には「愚連隊卍」の落書き。食堂ではヤンキーとおばちゃんが毎日バトり、ロビーのソファーは常にヤンキーがたむろしていて大声で騒いでいる。

教習時には全員に予め数字の付いたビブスが渡されるのだが、教員からは「○○番何してんだ!!」「○○番遅えんだよ!!」「次!!○○番!!!」と番号呼びで怒鳴られる。基本怒号が教習中は響く。

 

②宿舎制度

消灯時間である21:30になると

「点呼を始めます。廊下に集合してください。」

放送がかかりあちらこちらから「ガチャ...」とドアが開き一列に並ぶ。そして点呼。

「よし、全員いるな!おとなしく寝ること!」そして全員またそそくさと部屋に戻る。マジで監獄。

風呂も大浴場なのだが、教習時間が終わると混雑しシャワーを待つのに行列が出来る。当たり前だけどみんな丸裸。マジで監獄。

ある日教官に言われる。「お前らの食べてる飯の一食分の値段知ってっか?150円だぞww」マジで監獄。

 

そんなこんなでひたすら日々に耐え、2週間弱で無事卒業した。卒業時の「お前ら、よく頑張ったな!!」とイカつい教官に言われた時はみんな清々しい顔をしていたように思えた。

普段厳しい人が見せる終わり際の優しさはずるい。

 

バイクにまたがり、エンジンをかける。半クラから始まり1...2......3速と速度を上げていく。

今回のルートはこれ。

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位置的に言うと山形との境である蔵王までツーリングした。

 

 

半クラ...1速、2速、3速、4...。アクセルを捻りスピードを上げる。速度はメーターを見るよりも受ける逆風によって判断することの方が多いように感じる。80kmを出したときの風といったらミラーをチラッと見る瞬間の首の曲げで、油断すると軽く全身がもってかれそうになるくらい。

軽快に青空と広がる雲、田んぼ道を走り気付くと山を走っていた。展望台にバイクを止める。

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ガチの山。森の青々とした風景がきれいで、空気も美味い。コロナでマスク越しの空気を吸うのが当たり前になっているが純粋な空気はきれいだ。

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少なからずバイクに求めていたのはこういうものだったように思える。誰もいない自然溢れた道を風を感じながら自由に走る。アクセルを捻るとスピードを上げ景色に溶け込んでいくような。

 

徐々に目的地までの距離が0に近付く中、山頂に向かう道を見て仰天。急カーブの連続。

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バイクはMTなので、そのギアに合うエンジンの回転数じゃないと普通にエンストする。登りの斜面は厳しく、アクセルとギアの調整とカーブに体を預けながら登った。

 

気付くと先ほどの青空は消え、辺りは灰色一色。どうやら雲らしい(後に他の人が話していた)

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真っ白に覆われた景色のなかを飛ばし、山頂に着く。

 

 

12:30 御釜

「無理...寒すぎる..........

ここは標高1600mくらいらしい。マジで寒い。実は向かう途中道路脇には雪が積もっていた。

バイクは風圧で体感温度が著しく下がるので、少し厚着をしていたのだがそれでも寒すぎる。車で来ている人のなかには半袖の人もいた。

 

腕を組み、猫背になりながら体を抱くようにして強風のなかを歩く。

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「過酷過ぎて草www

場所に似つかわしくない服装と強風。強風で霧なのか雲なのか分からないものが頭上と目の前を通り過ぎていく。ひたすらに耐え歩く。指先の感覚は0に近付こうとしていた。

 

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「見えねぇwww

もう見えないレベルとかじゃなくてただただ寒い。帰りたい。寒さが服を貫通する。前髪は風でパッサーン。バイクは当たり前だけど手で操作するので指先の感覚がなくなった今、帰りが普通に心配だった。

 

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一瞬雲が晴れた瞬間を狙い、写真を撮る。

肝心の御釜は「ふーーーん」と流し、それよりも下界の景色がきれいだった。FF3opみたいなファンタジーがそこにはあった。

 

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御釜は刈田岳、熊野岳、五色岳の3峰に囲まれて出来た火口湖らしい。火口湖とは火山の噴火口に水が溜まってできた湖。水の供給源は降水や地表水、地下水などの流入らしく自身の見解だと山の火山活動かなんかでくぼみができ、降水や火山活動から地下水が溜まり出来たのだと思える。調べると意味にそのものの説明にまた専門用語が出てきてまたそれを調べると専門用語が出てきて...の繰り返しで面倒なので、単に「わぁ、すごいーー!映え!!」みたいな偏差値が丁度いいのかも知れない。

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休憩所に入り、レストランへ。雰囲気はスノボとかスキーで利用するレストランみたいな感じだった。

中途半端なカーペットと無愛想に並べられたテーブルとイス。外が見える大きな窓と15℃に設定されたストーブ。

 

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かき揚げそばを頼む。冷えた体にとにかく染みる。

汁や麺を体に取り入れる度に、体の中心から四肢に感覚が戻っていくような。

(そういえば、今年一人でスノボ行ったなぁ)

窓の外の何も見えない景色を眺めながら思う。 

2021 2/16-17 東京観光&ソロスノボ旅 - 気ままな旅行記

 

 

レストランを出て、缶コーヒーを買いさらにあったまる。ストーブの前にしゃがみ込む。

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「ああ、ここに居たいなあ、振り返って戻りたいなあ。」

俺の中の炭治郎が囁く。鬼滅ブームと言われたのも半年前近くのことであり、時代の流れを一人感じていた。瞬足なんてもう何十年も前のことだ。

 

覚悟を決め、バイクに跨る。スピードを上げて下る。

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「あ```````````!!!!!発狂。ヘルメット越しに叫ぶ。

寒すぎる。雪の残る冷たい風が70kmを有した肌を突き刺していく。

 

 

恐らく標高の寒さだったのだろう。ある程度下界に降りると気温が戻り、ひだまりが暖かかった。そこから見える景色は澄み渡り、5分間にわたる気温のアップダウンと強風を制したものだけが見えるものだった。

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―――バンク。バイクで曲がるときに体を傾けること。

下りの急カーブはスピードに任せて、ジェットコースターが地面スレスレを走るように体を傾けて降りる。急スピードからの急カーブは一瞬にして景色が伸びてくる。ブレーキと体の傾きを間違えるとそのまま崖や対向車線に突っ込んでしまう危うさがそこにはあった。だけど攻めたくなる。スリルと隣り合わせなのがバイクがよく危険だと言われる要因だと思う。ぶっちゃけスレスレのブレーキで災難を逃れた場面もあった。

 

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特攻の拓のようにいつかスピードの向こう側を目指したいと思う。

 

 

14:20 ハートランド牧場

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「平和か!!!」

天国と地獄を数時間で往復した気分だった。ぽかぽかと少し汗ばむような気温とサァーっと風が草木を抜け髪の毛を揺らす。家族連れがほとんどであり、子供たちが元気よく駆け回っていた。

 

 

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俺も草を食ってるだけで「可愛いーー!」と女の子達に写真を撮られたい人生だった。

けど同時に「草食って終わる人生もな...」と人間派の意見も出てくる。多分人間には分からない山羊の世界もあるのだろう。まぁ幸せになってくれ。

 

最後にトイレを借りに売店へ。こういうとこでよく売られている現地で作ったソーセージやら牛乳やらはほんと残酷だと毎回思う。動物たちの目の前で食べてドヤ顔してやろうかと思ったが、普通に可哀そうなのでバイクに跨り牧場を後にした。

 

 

 

日が暮れようとしているなか、最後に海に向かう。今日はあまりに寒かったので結局宿泊はせず、海でとりあえず火を起こそうと考えていた。釣具屋で餌を買い、スーパーで前祭の肉を買った。

 

 

16:40 海辺

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夕暮れが雲で覆われ雰囲気が出ていた。

薪や草を集め、適当なとこに座りリュックの中からB6かまど君とスーパーで買ったものを並べる。

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「宝物かなぁ!?」

 

 

適当に火をつける。火は次第に激しく燃え上がり輪廻転生を彷彿とさせた。没頭。

(俺は一人何をしているんだろう...)浮かぶ雲を眺めながら思う。

 

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神奈川から仙台に越してきて何一つ変わっていない。というより他人に後ろ指をさされるような生き方でなくなってしまうと、それこそ人生おしまいな気がする。型にはめられ、ただなんとなく生きるよりは自分のしたいように生きていたい。そこでハブを食らおうが構わない。

 

そもそも誰もが利己的で自分のことしか考えていないのに、他人を思いやるっていうのがめんどくさい。キャリアや年齢に縋って人に寄り添えない人間達に中指を立てながら、どこまでも続いてそうな青空の下で焚火のパチパチという音が静かに聞こえていた。

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調子に乗って火を強くし過ぎたせいか、中まで火が通る前に黒焦げになっていて笑った。

 

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「普通にうめぇ!」

逆に肉がどうしたら不味くなるだろうか。不格好に串に刺した肉にかじりつく。ここまで偏差値28。枯れ木に火をつけ肉を焼き、かじりつく。古代文明からの言い伝え。

 

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飯を食べたあとは釣り。ぶっちゃけ食べたことに満足してめんどくさくなっていたが、軽く20~30分くらいした。

 

結局釣れなかった。

 

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戻る途中鳥居にとんでもない落書きがされてあるのを見つけ、声を出して笑ってしまった。前はなかったのに。

 

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ひょっとしたらこの世界には自分しかいないんじゃないかと思うような日の傾き具合に背を向け、バイクを走らせ家に向かった。

 

BGMは東京初期衝動の再生ボタン。

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 「やりたいことをやっているだけさ 口だけのやつはおいていくぜ」

おしまい。