6:15 起床
(なんで休日なのにこんな時間に起きなくちゃいけないんだよ...)
身体に残るアルコールを少し感じながら布団を出て、シャワーを浴びる。着替えを済ませ6:40頃家を出る。
外は早朝だというのにすでに暑く、今日は気温が高くなるだろうと予想がついた。缶コーヒーを買い駅前に向かう。
いた。遠目に見覚えのあるシルエット。
――――「仙台めっちゃいいとこだよ」
4月に越してきて少しばかり慣れたとき、ある友達に言う。
「ま?んじゃ行くわww」わずか5秒。今回の旅が決まる。
まぁこの友達っていうのが前回出てきた奴なんだけれども。
2020 11/28-29 群馬野郎二人旅 - 気ままな旅行記
夜行バスで朝に着いて、そのまますぐに行こうとしているコイツのタフさは少しヤバい。
レンタカーの予約は7時から。まさかレンタカー店の前で開店を待つことになるとは。
レンタカーを借り、ひたすら北上する。
今回のルートはこれ。
仙台から上に行き、松島を通り石巻南三陸を過ぎて、まず最初は一番上の気仙沼に行く。
最初は車通りが多かったものの松島を過ぎたあたりからは一面田んぼだらけだった。
9:30 岩井﨑
着いた。スカイブルーの空に松の木がよく溶け込んでいた。
気仙沼にいる。それはもう10年は経ってしまったが被災地である。
来る途中やこの場所でも所々うかがえる傷跡が残っていた。
龍の松と呼ばれるこの木は震災で発生した津波に対して、唯一残った木であるとされている。17mの津波が来たと記載されており想像も付かなかった。
なんともまぁ普通に綺麗な場所っていうのが皮肉だった。
11:00 かもめ食堂
そのまま10分ほど北上し、かもめ食堂に着く。
スタンダードなラーメンを食べる。
大体スタンダードなラーメンってのは夕焼けを5~6回潰したような懐かしさのなかに、針に糸を通すようなまっすぐさを兼ね備えている。アップもなければダウンもない。ほんとにスタンダード。だがしかし、ここで食べたラーメンはダウンが消え常にアップをし続けるような味わいだった。堂々の1位。
そしてそのまま隣にあったカフェでブレイク。
アイスコーヒーを頼む俺とカプチーノ?を頼むツレ。カプチーノにはラテアートがされており、なんかむかついた。そんなふうにおしゃれなものを飲みたいもんだ。
実は神奈川から宮城に渡る前の学生最後の3月、気になっていた子とは自然消滅。その子はカフェ店員だった。
「俺4月から仙台行くことになったわ...」
半ば自分自身の主人公感に陶酔しながらも、結局は明かすことが出来ずにこっちに来てしまった。今でも予測変換には一文字入れただけでその人の名前が一番前に出てくる。まぁ幸せになってくれ。
13:00 田束山
「看板きったなwww」
ここは標高512.4mであり、山頂までは車で来ることが出来る。
広々とした景色がきれいだった。
5月の下旬?ごろには山の斜面がつつじでいっぱいになるらしい。
歳を取るごとに自分自身の尖りが消え丸みを帯びるようになり、気付いたら「写真撮って!!」と変なポーズを取っていた。
「これ後ろでハート作れんのやばない!?」
意気揚々とツレに絡んでいたのだが、誰にも出来るらしい。目の前でやって見せられて、自分の愚かさを少し知った。
13:45 荒嶋神社
そのまますぐ近くの荒嶋神社へ。ここは島に神社があり渡っていくようなかたちになる。
なによりも海がきれいで沖縄の海のようだった。
繰り返すようになるがやはりここも被災地であり、基礎を残し損壊したらしい。
島に渡り神社までの道は思ったより険しく、きれいな靴で来たことに若干後悔したが、5分ほどで着いた。
一通り参拝を終えて、海を眺め車に戻る。
子供たちがはしゃいでいて良かった。
14:20 震災復興記念公園
ここは東日本大震災によって犠牲になった人の名簿を納める「名簿安置の碑」や、街の復興を祈念して設えられた「復興記念のテラス」が存在している。また、防災庁舎も当時のまま残っており全体的に痛ましさがあった。
こんなところで震災がどうとか言うのも違うので、あまり語る気はないが一通り見た後の足取りは重く、(歩くってどんなんだっけ...)と思う。名簿や石碑、小学1年生が願う未来への希望の言葉は写真を撮る気にはなれなかった。
そのあとはすぐ隣にある商店街に行き、今日のつまみになる海鮮物を買う。運転はツレに任せ、串ものとビールで一人優勝した。てんきゅーまいふれ。
15:30 珈琲神社
宿に行く前にふらっと寄る。店自身が不味いコーヒー屋と豪語していることからも変わった店という印象を受けるが、実際変わっていた。
まず最初に、ケージにいる犬に吠えられマスターも独特な人であり「コーヒー不味いですよー」と言われる。
他にも「どっちのコースターがいい?」と言われ指差した方とは逆の物を渡されたり、提供の際違うメニューの内容を言われたり(ガチの間違えだったのか未だに分からん)した。
しかし、店内は雰囲気があり流れている音楽とマッチしていた。
17:00 宿
宿はランキングの上位や雑誌の見出しになっているようなところであり楽しみだった。
チェックインを済ませ部屋に入る。
「おおん!!」
部屋は広くオーシャンビュー。かもめがバルコニーの淵にとまっていた。荷物を置き温泉へ。
温泉もやはりオーシャンビュー。誰もいなかったのでのんびり浸かることが出来た。浴衣ってのが窮屈で苦手なのだが、着替えて夕食に向かった。
「おおん!!」
海鮮や天ぷら、釜飯、そして極めつけはアワビと鴨鍋だった。
ビールで乾杯。黙々と食べる。
アワビは横隔膜を10枚重ねたぐらいの弾力であり食べ応えがあった。そして鴨肉はシャっとした感触で消えたかと思いきや、まだ舌の上で生きている食感。
「ありがとう世界」
夕食を終え宿にある古い機種しかないゲームコーナーへ。社会人という地位を生かし札をありったけ崩す。豪遊。
特にシューティングゲームでは1時間弱やっており二人して軽く汗をかいた。行き交う人にガン見されたけどまぁそれがちょうどいい。俺らはいつだってくだらないことに本気だ。
部屋に戻り、また温泉。今度は露天風呂。
真っ黒な海に白いかもめが点々といるのを眺めながらサウナも決めてしまった。
飯風呂ときてぶっちゃけ寝る流れだったのだが、酒盛り。買ってきたつまみと酒で優勝。
いつもコイツはそうなのだが、話をしている途中で寝たのでそのままその日を終えた。
2日目
6:00 起床
「朝風呂行くべ!!」
休日だというのに2日連続して6時台起き。遊びに対しても意識が高い。
宿の向き的に、朝日がまっすぐ見えた。
眠さはあるのだがシャワーからの開放的な露天風呂は気持ちよく、朝日と風に包まれながら入浴。
そのあとは朝飯のバイキング。
社会人になってから朝飯を食べる習慣がついたのでしっかりと食べた。そもそも社会人になってから意識が高くなった気がする。週2~3ペースでランニング筋トレ体幹、栄養バランスを考えた食事、休日でも7時台には起きてるし大抵外出している。まぁ今だけなのかもしれないけど。
8時過ぎには宿を出発し石巻港へ。車を停め、フェリーに乗り田代島に向かう。
このフェリーがなかなかの鬼門であり、揺れがすさまじくきつかった。横揺れならまだ平気なのだが、波に打ち上げられ縦にフワッと揺れる感覚が苦手。例えるならタワテラの落ちるとこだけ1分間に3~4回くるようなそんな感じ。
「俺海好きだし海賊王になるから見といてくれ...」とツレに昔言った過去を呪い、ひたすら目を閉じて耐えた。
9:40 田代島
着いた瞬間、他の客を掻き分けるように外に出て空気を吸う。やっと着いた。乗車時間は20~30分くらいだったけど。
島のメインの方とは逆の方の港に降りたため、辺りは森。乗客も降りたのは1~2割ほどだった。
田代島は島民よりも猫が多いと言われており、島自体は2~3時間歩けば1周できるような大きさである。
「まぁ、歩いてれば猫いるっしょ!!!」
「いや、いなくて草wwww」
もう1~2時間歩いたというのに1匹も遭遇していない。これまで遭遇したのはクマンバチが5~6匹とカナヘビ2匹、クモが7~8匹ぐらい。ただの森を歩いてるだけだった。
しかも周りには自分たちしかおらず、明らかに正規ルートを外れているのは明白だった。
2時間ですれ違ったのは結局1組だけであり、島ともなんとも言えない普通の道をただただ歩き回った。
ようやく森を抜け、人工物らしきものが見えたときは二人ともテンションが上がっていた。
すると、、、、
「いや多すぎて草wwww」
森を抜けた瞬間、猫がわんさか出てきて自分たちの横を素通りしていく。ここで初めて猫が群れで移動することを知る。
「可愛すぎだろ」
令和最大級のバグ。時間を忘れて戯れた。気付くと50分ほど経っていた。
遭遇したのは20~30匹ほどで、群れで寝っ転がりまたどっかに行き...違う群れがまた来て寝っ転がり...の繰り返しだった。詳しく観察するとどんなに群れの中の1匹を引き留めようと撫でていても、群れが離れようとすると我に返りスタコラと行ってしまった。
猫たちに別れを告げ、適当に歩くもまた前方から猫の群れがやってくる。その度に別れを告げ...と島を散策していく。
途中あった食堂の入口付近では、今まで以上に猫が大量にいて軽く引いた。
そして時間は過ぎ、もう一つの港に着いた。
フェリーに乗り込み本土に上陸。お互いに疲労が溜まっていたので車のなかで1時間は寝た。そして車を走らせ、仙台駅に向かう。
17:30 仙台駅
「ほーら!ここが俺の街だ!!すげぇだろ!!!」
来て1ヶ月しか経っていないのに得意げに言う。
適当な牛タン屋に入り、酒と牛タンを頼む。
優勝。今回もいい旅だった。
神奈川から仙台にわざわざ来てくれたのもあって、奢ろうとも考えたがなんとなくやめておいた。変に上下だったり貸し借りを作るのはそぐわない気がしたから。
そのあとは家で適当に休んで、ツレは夜行バスで帰っていった。翌日仕事あるのにね、5時過ぎに着いて一旦家に戻り8時前には出るらしい。
俺も俺で翌日仕事があるので、気合を入れるために見送ったあとにそのままランニング。夜の街を軽快に走った。
BGMはPK shampooの3D/Biela。「何があったって構わない 君と生きていくよ」
おしまい。